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1.23歳限界説の理由
1-1/大手プロダクション所属が困難
現在、業界上位5位までの大手プロダクションでは、自附属養成所出身者であっても26歳までしかジュニアとして所属させない傾向がある。
これは声優アイドル・ブーム以降の現象で、声優ブームが沈静化した90年代末以降も、まだ、ひきずっているのが実情だ。
「26歳? ならば、25歳だっていいんじゃないか?」と考える人もいるだろう。声優となるための修業が1〜2年で済むなら、24歳以上であってもなんら問題はない。大事なことは、声優として通用する能力を備えるには、よほど優秀な人で3〜5年、一般的には6〜8年の修業が必要になるのを知ることだ。
ひとつの養成所に通い、一発で所属できることなどはほとんどない。2〜3の養成所を渡り歩き、自らの能力を高め、所属させてもらえるようにならねばならない。
こうしたステップを踏まねばならないからこそ、23歳までに修業を始めないと、圧倒的に不利となるわけだ。
1-2/身体能力が伸びにくい
声優とは「声のマスコミ仕事をするプロ俳優」のことである。そこにはプロ俳優としてギャラをもらえる、制作サイドにしてみればギャラを払うだけの価値=能力がなくてはならない。
その能力の第一に発声能力がある。そして、発声において最も大事なことは身体能力である。23歳を過ぎると、この身体能力の向上速度が極めて落ちるのだ。
たとえば、同じ身体訓練を行ったとしても、十代は100やって100の身体能力向上があるのに比べ、23歳を過ぎると100の身体訓練をやっても50くらいの効果しか期待できないのである。
ならば、若い志望者が100やっていることを、23歳以上は200やればいい計算だ。しかし、常時、人の2倍の身体訓練を5〜10年続けることが、本当に可能だろうか?
時間が2倍だけならどうにかなるかもしれないが、疲労度は2倍以上となる。
特に声優志望者は運動をしてこなかった人が多いため、筋肉や関節にかかる負担が大きい傾向がある。極度の疲労が、足腰の関節にかける負担は計り知れないものがあるのだ。
怪我や故障をしてしまった場合、完治するまでは稽古を休まなくてはならないし、最悪の場合、仕事を休んだり変えなくてはならなくなる。つまり、生活崩壊の危険まで含んでいるのだ……
1-3/キャリアの差
養成所にもよるが、一般的な養成所の平均年齢は20〜22歳である。私自身が教えた最少年齢は高校1年生(16歳)だ。
1-1で「3〜8年の修業期間が必要」「大手プロダクションは26歳までしか所属させない傾向が強い」と述べているが、20歳で修業を始めた場合、26歳までのキャリア(修業経験年数)は6年となる。16歳で始めた志望者は、26歳となった時に10年のキャリアとなる計算だ。
現在、23歳の人が修業を始めた場合、26歳の時点では3年のキャリアしか積めない。これは20歳で始めた人の半分、16歳で始めた人の3分の1以下に過ぎない。
私はこのhpの他コーナーで「真剣にやれば、1年の差は半年で、2年の差は1年で追いつける」といっているが、3年以上の差はなかなか追いつけないものである。圧倒的な経験不足による能力の差は、なかなか埋められないものなのだ。
真面目に修業している志望者は、最低でも1日3時間の自主練習(身体訓練60分+発声練習60分+滑舌練習60分=計180分)をしている。1年で約1000時間。キャリア5年なら5000時間、10年なら10000時間という計算だ。
23歳から始めた場合、1日3時間の自主練習では26歳の時点で3000時間にしか満たない。キャリア5年を追い抜こうと思ったら、1日約5時間の自主練習時間を持たなければならない。キャリア10年に至っては1日約10時間である。生活のためのアルバイトなどを抱えた状態で、1日5時間を超える自主練習時間を持つなどということが実際に可能だろうか……? または、そんな生活を何年間も続けることは……?
2.諦めたくない23歳以上の志望者へ
以上のように、23歳以上の人は声優志望者として極めて不利な状況にあるといわざるを得ないのが現実だ。
ただし、いくつかの抜け道もある……
2-1/大手プロダクションに固執しない
「寄らば大樹の陰」ではないが、誰がどう考えても、中小プロダクションよりも大手プロダクションのお世話になりたいものだ。
大手と中小では、営業力も業界への影響力も全く違う。
大手では【キャスティング・コーディネイト(演技事務)】といったかたちで作品のキャスティング全てを一括して受注したり、企画段階からプロジェクトに参画するなどして、仕事のチャンスそのものが多い。また、単純にマネージャー1人あたりの俳優の数が少ないため、仕事を振りやすい体制がある。
中小では、キャスティング・コーディネイトをとれることが少なく、マネージャー1人あたりの俳優の数が多いため、なかなか仕事を振れない現実がある。
しかし、大手が26歳以下しか視界に入れていないというのであれば、現時点で23歳を超えてしまっている志望者は、中小を狙うのが現実的といえよう。
中小は、営業力が低いからこそ、即戦力を求める傾向が強い。オーディションなど、せっかくのチャンスを逃したくないからこそ、能力がある人を求めるのだ。また、所帯が小さいからこそ、トップと役者が身近だともいえよう。デスクや社長などに認めてもらえるチャンスが、大手よりは多い。
ただし、中小では、仕事そのものの数が少ないため、声優として食えるかどうかについては疑問が残る……
2-2/演劇セミナーに積極的に参加を
声優になりたいから、声優関係の勉強しかしないというのは、考え方としてオカシイ。声優=俳優なのだから、俳優向けのセミナーには、積極的に参加しよう。
本質的には同じことを教えているにしても、指導者によって、その理解度は全く異なる。なんといっても、23歳以上の志望者は切羽詰まっているのだ。ただ、ガムシャラにやるばかりではなく、様々な演劇指導者と出会い、わずかでも自分を高めるチャンスを逃さないようにしなくてはいけない。
また、声優学校の中には、プロダクションと関係をもたないところもある。そういう学校と附属養成所を同時に受講(ダブルスクール)して、両方の長所を得ることも有効な修業法だ。
ただし、セミナーならばともかく、ダブルスクールは、生活的・金銭的にかなりの負担がかかることを覚悟しなければならない。これについては自分自身で調節してほしい。
また、附属養成所によっては、ダブルスクールを嫌がるところもある。「講師(演出)が違うと、生徒が混乱する」という理由で、だ。混乱は確かにある。しかし、本人が「附属はチャンスを得るため、学校は能力を高めるため」と割り切れたならば、ほとんど問題はない。附属養成所には黙っておけばいい。
なお、23歳を超えて修業を始める志望者は、速攻でヴォイストレーナーを探して通うべきだ。その他、ダンスやアスレチック・ジムなども早めに通うことを勧める。
若い志望者は、ここらへんの意識が甘い者が多く、けっこうノンビリしている。若い連中が「ボイトレやダンスはそのうちに……」とボヤボヤしているうちに、自分はいち早くボイトレやジムに通い、基礎能力において差をつければいいのだ。
2-3/劇団も視野に入れる
ここのhpをよく読んでもらえればわかるが、声優=俳優である。
だが、ほとんどの声優志望者は声優=俳優という図式を頭では理解していても、心情的には理解したくない傾向がある。「舞台役者になりたいわけじゃないから」「舞台は大変だから」「舞台には興味がない」とアッサリ捨てている志望者のなんと多いことであろうか。
ここが23歳以上の志望者にとってはミソとなる。
声優のマネジメントをしているのは、なにも声優系プロダクションや声優系劇団だけに限られているわけではない。実際、アニメのオーディション現場には、劇団からの参加者も数多くいる。また、附属養成所に比べ、劇団は年齢制限が緩い。そのため、劇団からオーディションに来る新人は、声優プロダクションが連れてくる新人に比べて老けている傾向がある(笑)。
声優=俳優という関係をしっかりと認識しているのであれば、劇団を候補とするのは不自然なことでもなんでもない。それどころか極めて自然な選択肢のひとつである。あとは本人の意識の問題だけだ。
参考としてマネジメント機能をもった劇団附属研究所などの受験資格を記載しておく(参考『芸能マスコミ養成全ガイド』夏書館/詳細は本書で調べてください)
○文学座付属演劇研究所/18歳以上 高卒程度の学力がある者
○円・演劇研究所/高卒以上の学力を有する者で30歳まで
○劇団俳優座/17歳以上の男女
○テアトルエコー/18歳以上、経験不問
3.最後に…… 安達成彦より
とにもかくにも誤解しないでほしいこと。それは「安達は23歳未満しか相手にしない」というわけではない、ということ。23歳限界説というのは、業界の現状を客観的にみた結果論に過ぎない。
ただね、勝田声優学院での進路指導の経験上、25歳以上の進路指導は本当に難しいんだよ。
男は、まだ、いいんだよね。男の志望者は女性に比べると少ないので、競争が(チョッピリ)緩いから。それに男だったら30歳を超えていても、所属させてくれるプロダクションがけっこう多い。
女性はもう本当に大変。勝田の次の養成所までは指導できても、そこで残れるかどうかになると運任せというところがある。そのまた次の進路となると、数日は「うぅ〜ん……」と考え込んでしまうほどだ。
今、このコーナーを読んでいるキミが24歳以上の社会人で「なんといわれても、修業してみたいんですっ!」というのなら、まずは週1〜2回の養成所か私塾に通ってみることをオススメする。そこで1〜3年やってみて、自分の適性というものを計ってみて欲しい。
間違っても、いきなり会社を辞職をしてはいけない。あくまでも生活を最優先させておこう。始めてみればわかるが、俳優修業というものは、たとえ週1回であっても相当に生活に影響する。ましてや、せっかくの仕事を棒に振るとなると、かなり大変な事態となる。
また、向き不向きというものもある。私は「俳優としての才能は、生まれついてのものではなく、修業の中で磨いていくものだ」と主張しているが、修業の向き不向きはあるのだ。
たとえば、他の同期が2回練習すればできることを4回以上練習しないとできないとか、他の同期が1時間練習すればできることを2時間以上練習しないとできないとか……
こういう人は他人の倍は頑張り抜けばいいだけだ。しかし、マスコミ仕事をする役者としては、時間との勝負もあるのだから、そうそう悠長にはやっていられない。特に年齢でハンディを抱えている場合には、かなりのプレッシャーを覚悟すべきだ。
現在、24歳以上で、要歯列矯正者の場合は、本当に冷静になって欲しい。十代なら2〜3年で終わる歯列矯正が、20代半ばともなると4〜6年かかるのはザラなのだ。
つまり、声優としてプロダクション所属すべく修業している期間のほぼ全ては歯列矯正期間にあたる。しかも、歯列矯正中は、プロダクションは絶対に残さない。
なんにせよ、結論は、24歳以上で声優の修業を始める人は、かなりの覚悟と決意が必要になるということだ。
24歳を過ぎて修業を始めたならば、私塾であろうが、附属養成所であろうが、講師に言われたことだけをやって満足しているようではいけない。確実に、同期のトップに君臨すること。たとえ、トップを張っていたとしても、かなりキツことはキツいのだ。このことだけは絶対に忘れないで欲しい。
間違えても、若い同期といっしょになって、チィチィパッパチィーパッパとやっていてはいけない。自分は他の同期のような余裕はないのだと自覚し、頑張りに頑張り抜いてほしい。
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