悶絶滑舌! PART1

教本に載っている滑舌練習文では物足りないとお嘆きの貴方……
そんな貴方にエモティオからの素敵な贈り物!
どうぞ、お試しあれ♪(作・ヘロミン)

この滑舌練習文の一切の転用・転載・複製を禁止します



■ ア行 ■

 奥羽で愛育委員を営む井植委員はいまいましいほどの愛妻家だったけれど、今はういういしい初孫の女の子やうぬぼれの強い甥をえこひいきするので妻の井植愛は胃炎になり、囲炉裏端で外郎を食べながら井植委員と言い合ったが受け入れられず、井植愛は乳母に応援されて家出を決行。「永遠に待ちあぐめ」と挨拶して嗚咽を漏らしつつ飛び出した井植愛は、上野駅前の青色の牛小屋に仮住まい。一日経った頃に井植委員がお迎えに行くとは、毎度のことながらお幸せに。


■ イ段 ■

 父君に会いに一日道を地道に必死に行き、入り日に志木に着き、しきりにりりしい父君の右耳にシミがミエ、知識人の桐木医師に地磁気で診てもらい、きりきりちりちりひりひりぴりぴりきしきしきし父君は力み、生き地獄。父君の右耳のシミは、明らかにシジミ汁にひじき・七味・一味の意識的な入れすぎ。


■ カ行 ■

 昨日からここでこうして聞き込みをした結果、この度の夏期休暇中に外国の教会で挙式された東京特許許可局企画課の柿崎嘉平課長と、関東味覚研究期間でカタイ価値繰りと汗をかきかき格闘する菊子研究員の結婚式は、金管楽器だけの第九交響曲で開始され、菊の茎の型の菓子と金メッキの指輪の交換とケーキカットに続き、酒は禁止されているのでコカコーラや葛根湯で乾杯。最後は桂小金治から子嘉平に送る心からの滑舌訓練が決行され、嘉平と菊子と観客は仲良く声を揃えて「菊吉菊吉菊吉切りまで菊栗菊栗三菊栗きっかけ聞く気か聞かん気か菊桐菊桐三菊桐お小言食い食い菊吉大吉吉」と絶叫。引き出物は奇々怪々な掛け軸がよかったが資金の関係で却下され、結局、規格価格の古々米と神田鍛冶町で購入されたという黒っぽい草色の薬を送ることとなりました。客たちは小箱にそれらを入れて貨客船や旅客機でキャッキャッと嬉しそうに帰郷したそうだが、空気感染しそうな結核菌がここかしこにいるといわれている危険区域通過中に窓から投棄したということで、柿崎嘉平と柿崎菊子はカッカカッカキーキーキーケッケッと口をとがらせて舌打ち。


■ 鼻濁音 ■

 どんぐり眼にへの字口、いがぐり頭に皮脚絆姿の杉垣新吾さんが、教護後、第五交響曲の流れるイギリスの音楽大学音楽学部器楽学科オルガン専攻をどぎまぎしながら見学しましたが、長靴を脱がなかったがために英語言語学会のお偉方の機嫌を損ね、東側校舎の会議室まで胸ぐらを掴まれて連れて行かれガミガミ言われたが英語が分からず語義も語源もわからなかったので、杉垣新吾さんは真顔をゆがめ身構えてポルトガル語で次々に「小米の生噛み小鴨も生噛み子亀孫亀曾孫亀、八ヶ岳の峠の我が家」と主義主張や人間の権限を小声で講義なさったそうです。がしかし、それがきっかけで英語言語学会の皆様方にかわいがられ気に入られ、おみやげに美術工芸品やらうがい薬やら絵葉書が名残惜しげに渡されて、音楽大学入学後には演劇部と英語言語学会にはいるよう進められたのだと杉垣新吾さんは自慢げにおっしゃいましたが、一ヶ月後に保護者の西郷菊吉市議会議員に伺ったところ、全てはただの駅前留学だったらしく、杉垣新吾さんと西郷菊吉三は涙ぐみつつ消え入るがごとき声で、最中をもぐもぐ文句ももぐもぐもぐもぐもぐもぐむもぐもぐとは見苦しいこと。


■ 鼻濁音・2 ■

 迷子の蛾がぐんぐん逆の方角へ急ぎ人間が逃げる音楽劇を、九月一五日の授業終了後に大劇場で観劇したが、主演の演技の投げやり加減が見苦しくお義理にもお行儀よく見続けられず、我が輩は三階に下がり、こんがり焦がした神戸ギュウのステーキと麦ご飯、それらプラス水牛の牛乳を乳牛の牛乳で五分五分に割った混合ドリンクで腹ごしらえをしながら悪逆非道な陰口をたたいた。文句ももぐもぐ麦ご飯ももぐもぐ水牛乳牛牛乳もごくごくもぐもぐごくごくもぐもぐごく。


■ カ行・ガ行・鼻濁音の拗音 ■

 キャンプ中のギャングが創業五百年の牛乳を飲んで呼吸が止まり、急遽休暇中だった救護班が特急で駆けつけたが、同業者が救急車でやってきたので救護は合同作業となった。高級究極珠玉の薬が配給されたがギャングは逝去。狂詩曲風なお経が流れる新宿御苑での葬儀には顧客や乳牛や御者や反逆者も参加し、行列になって牛乳を飲んだ。


■ サ行 ■

 そうそうそういえば昔、静岡市と信州信濃と佐賀市にそそり建てられた最新式診察室には、佐々木靖氏という世界最年少で歯科医師資格試験に合格され、世界最速で昇進試験にも合格してしまわれた親切な先生がいらっしゃって、清水市出身でミニスカートの似合うスマートでスッピン美人の笹原咲子さんというセンスの素晴らしい私設秘書と一緒に、せっせせっせと診療の仕事に携わっていらっしゃられたそうです。しかし、しょせんは子々孫々までも囁かれるような自尊心の所持者という噂が世間に広まってしまい、三万三千三百三十三人の中から総選挙で選出されたスイスの世故長けた政治家でいらっしゃられるカルロス・シュトラウス最高裁判長や、福島市で名刺屋を世襲制で受け継ぐご主人であらせられる佐々三郎さんや、自称新案猪食試食審査員という少々嘘っぽい職業ながらも将来はソクラテス師匠のようになるんだと親戚の人たちに演説している鈴木その子似の双生児、そしてそして素敵な装丁に彩られた最新刊は、僭越ながら詩人の曾祖父の立身出世について詳細に説明した私小説だという歴史小説家の篠原先輩たちにまでそっぽを向かれ、佐々木靖先生はしくしくしくしく波を流したそうだが、サンタクロースは冴えた裾捌きでさっさと走り去ったという悲しい話はこれでおしまい。


■ サ行・ザ行の拗音 ■

 ジョルジュ・シュテファン・シェニエ子爵の侍女はじゃじゃ馬娘。彼女の趣味は戦車を乗り回し、警察署や輸出商社の書写山支社や新宿区や原宿で、しゃもじや詩集や小説を衝動買いすることでござらっしゃいました。しかし、あまりにしょっちゅうなので顰蹙を買い、シェニエ子爵は癇癪を起こして手にしていらっしゃったシェリー酒やシャンパンなど他種類をジャバジャバジョボジョボジャバジョボジョボとこぼしてしまわれました。丁度その場にいらっしゃられた首相や役者や消費者たちがそれを死守しようとなさいましたが間に合いません。事情が事情なので干渉することも出来ず、彼らは最終電車で退出。そこに一人の医者が登場。シェニエ子爵は侍女を手術手術手術してもらうことにしました。医者と助手の手術は上手でフィニッシュにこしょう少々の注射で修了。じゃじゃ馬娘は淑女に変身して美女コンテストの二次予選選出を果たし、柔術・算術が決め手となり優勝され、表彰状所持者となった彼女のため、シェニエ子爵は支社区主催の祝勝会を開催。そんなご自慢の侍女の名はジュヌヴィエーヌ・ジャジャホース・シェニエ嬢とおっしゃいます。以上、全ては冗談じゃ。


■ 安達成彦より ■

 いやはやなんとも、凄まじい滑舌練習文である。このレベルともなると、プロダクションに正式所属している新人や若手であっても、9割近くは撃沈間違いなしだね。(^^;
 作者はエモティオの【滑舌大臣】であるヘロミン。かなり優秀な滑舌能力を持つヘロミンでさえ辛いものばかりを、ワザワザ組み合わせて文章にしたという珠玉の滑舌文です(笑)。
 ちなみにこれらの滑舌を、1年以上の修業経験を持つ志望者がダラダラとやっていても無意味。私から、目安としての息継ぎ回数を指定しておきましょう。

■ア行/0〜1回
■イ段/0回
■カ行/1〜3回
■鼻濁音/1〜2回
■鼻濁音2/0回
■カ行・ガ行・鼻濁音の拗音/0回
■サ行/1〜3回
■サ行・ザ行の拗音/1〜2回

 ちなみに「悶絶滑舌!」には、既に第2弾が用意されており、次回は、タ行、ダ行、ナ行、ハ行、マ行、ヤ行、ラ行、ワ行、外来語を掲載する予定です。お楽しみに♪