台詞術の基本
 台詞とは、テクニックだ。
 台詞の「入り」「転調」「間」そして「仕舞」のバリエーションの多さこそが、台詞術なのである。
 試しにNHKアナウンサーの中でも、トップクラスの実力をもったNHKスペシャルのナレーションをよく聴いてみるといい。約45分間の番組中に、数十の「入り、転調、間、仕舞」が組み合わされている。
 これを役者の台詞に置き換えれば、ホンを解釈した上でどんな表現を示そうかとプランニングする時、「どのテクニックが、もっとも台詞の役割を効果的に果たすか」と考え抜いて組み合わせれば良いのだ。

 前項で書いたように、どんなに役者が「こういう演技をしよう」と思ったとしても、それが結果として示されなければ(観客に伝わらなければ)演技表現とは呼べない。
 逆に、役者自身がその気になっていなくても、結果としてホンが求めた通りに示されれば、それは演技表現となる。プロの演技表現が目指すベクトルとは、役者自身の感情ではなく、作品の成立であることを忘れてはいけない。

 さて、話を戻すが、台詞術は解釈力あってのものである。解釈なきところに、台詞は発生しないのである。
 ここで注意すべきことを列記しよう。

1・台詞の必然

 必然なきところに台詞は発生しない。何の気なしに発する台詞の場合は、ト書きに(ふと)とついているはずだ。つまり、それ以外の台詞には、必然があるのだ。
 ここで注意すべきは、全ての台詞には必然がある、ということだ。そして、全ての台詞は複雑に絡み合っている。だから、自分の役の台詞だけではなく、全ての台詞を解釈して必然を計算し尽くさねばならない。

2・台詞の役割

 台詞を解釈する時に忘れてはいけないのは、その台詞が作品の中で「どんな役割をもっているか」ということだ。台詞には「ストーリーのための台詞」「キャラクターのための台詞」「ドラマティックスのための台詞」「テーマのための台詞」という役割のどれか、またはいくつかの役割が複合して内包されている。
 これがわからなければ「台詞をタテる」なんてことはできないはずなのだ。この場合も、もちろん全ての台詞を解釈しなければならない。

3・受け、かけ

 芝居を始めて5年やそこいらまでの役者は、「台詞をかける」ことはできても、「台詞を受ける」ことがなかなかできない。ここでは単純にヒントを出しておこう。
 ある台詞があったとして、その台詞は誰の台詞を受けることによって発生するのか。または、その台詞は誰にかけると、次にどんな台詞を発生するか、を計算することだ。これは台詞の必然にかかることだが、特に重要なことなので覚えておいてほしい。



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