君は自然に喋れるか?
 初めて自分の声を録音して聴いた時、誰でも「え? 私ってこんな声?」と驚くはずである。これは頭の中で響く声と、口の外に出た音との違いだ。
 同じく、世の中のほとんどの人は「自分は普通に喋れている。変な喋り癖などというものはない」と思っているが、実は自然に喋れている人はごくわずかしかいないのである。
 この傾向は、学校演劇をやったことのある人間には特に強く、講師としての私はこの「変な喋り癖」を自覚させ、自然に喋れるよう矯正するのにホトホト苦労させられている。(学校演劇最大の問題点は、レベルの変わらない上級生からいぢくりまわされることにある。アマチュアとしてやっていくならそれでもかまわないが、声優ビジネスのできるプロ役者を目指すのであれば、学校演劇はやらない方がいいくらいだ)
 またもガツンと言っておくが「自分は芝居っ気がある」などと思い込んでいる人の99%は、ただ単純に「自然ではない=変なだけ」なのである。
 人には、それぞれ特有の喋りのリズムがある。そして、誰でも「早く喋る=よく喋れている」という勘違いに陥りがちだ。
 普通に喋るための基本をここでは説明しよう。

1・喋る速度は370音節/分

 これは民放連が示した基準である。いわば喋りの業界標準速度といってもいい。この370音節/分という喋りの速度を、意識的に遅くしたり、早くしたりして、緩急をつける。それにはまず、この速度を身につけることが基本となる。
 実際、この速度で声を出して読むとなると、朝日新聞の天声人語は3分20秒以上は確実にかかるはずだ。ところが意識的にこの読む速度を調節する訓練を行っていないと、3分そこそこか3分未満で喋り終わってしまっているはずである。
 喋り癖を直す最初の関門とは、この喋る速度のコントロールにある。

2・句読点を正しく活用する

 日本語の文章における句読点の意義はふたつある。ひとつは文章の意味を正確に伝えるため。そして、もうひとつ、ホンにおける句読点の意味としては「息継ぎ、ブレス」があるのだ。
 きちんとした訓練を受けていない役者のほとんどは、この句読点をグチャグチャにしてしまう傾向がある。自分で勝手につくりあげたリズムの中で、句読点の存在を無視してしまっているのだ。自分の息が続かなくなると、適当なところで息継ぎをしてしまう。
 この句読点を正確に読むだけでも、喋りはかなり自然なものになる。

3・助詞や語尾を無意味に伸ばさない

 これは志望者にとって、もっとも難しいが、絶対に意識してほしいところだ。最近の若い人は、無意味に助詞や語尾を伸ばす癖が染み付いてしまっている。
 「なんとかがぁ〜、なんとかでぇ〜、なんとかみたいなぁ〜かんじですぅ〜」というアレである。これは絶対に直してほしい。君たちの世代では普通の喋り方なのかもしれないが、広い世代を前に聞かせた時は、ただの「馬鹿っぽい喋り方」でしかないのである。

4・自分の喋りのリズムをチェック

 これは実際に誰かに頼んで指摘してもらうしかない。自分で発見しようとしても難しいものだ。自分の師匠に頼みなさい。

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 この自然な喋りをうるさく言うには、わけがある。
 役者は、ニュートラルで透明な存在でなければならないと前項で書いている。その延長線上で、癖のない喋りができなくては、台詞をタテることなどできないのだ。詳しくは次項を読んでほしい。



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