![]() 小天狗になるのは早い |
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養成所に入って半年か1年もすると、後輩が入ってくる。この時、君は「先輩風」という誘惑にかられることであろう。 誰だって、いつまでも自分がいちばん下だなんて事実は認めたくない。後輩ができれば威張ってしまうのは、社会的動物である人間の本能ともいうべきものだ。 だが、芝居を始めて1年や2年で先輩風など吹かせていると、あとで赤っ恥をかくだけなのである。 よく聞かれるのだが「どれぐらいの期間、勉強をするとプロの芝居のレベルに達することができるのですか?」というのがある。 正解は「プロは永遠に勉強を続け、その成果を問い続ける人たちのことをいいます。ここで一段落なんてものはありません」だ。 だが、この答えはあまりにもあまりなので、私は「個人差はありますが…」と前置きしてから指標を示している。 真面目な生徒が、論理的で熱心な講師と巡り合えれば、今の時代に求められている新人声優のレベルには3年で到達できる。 一般的な生徒であれば、5年はしっかりと基礎を積み重ねないと、プロとしてデビューできるレベルには到達するのは難しい。 ということは、だ。一般的な生徒のほとんどは、優秀な後輩に追い抜かれてしまうということなのである。 考えてもみたまえ。つい、こないだまで威張り散らしていた後輩に追い抜かれた時のことを。凄まじいまでの恐怖が襲ってはこないか? だから、私は親切心から警告するのである。「いい気になって先輩風など吹かさない方がいいよ」と。 また、私のように「下剋上、上等! 先輩を脅かせ! この業界は椅子取りゲームだ。先輩を追い抜かない限り、おまえら新参者が座る場所などどこにもないぞ!」とハッパをかける講師もいる。 その時、私はこう明言している。 「先輩と後輩の差はなにか? 先輩とは、後輩よりも長く基礎を練習し続けているということである。つまり、どんなに長く芝居をやっていても、基礎ができていない先輩などは尊敬するには値しない。 先輩に追い付き、追い越したかったら、基礎を徹底的にやり抜け。君たちが先輩だと思ってる、勉強を始めて2〜3年の志望者の9割はフヌケと化している。 2年の差だったら、真剣にやれば1年で追いつける。1年の差は半年、半年の差は数カ月だ。 そうやってほとんどの先輩に追い付き、追い越した時、どうしても追い越せない真面目に基礎を追求し続ける先輩こそが、君たちが尊敬すべき先輩なのだ」 芝居を始めて1年以上になったら、後輩の目標とされる先輩になっていなければならない。実力で尊敬されなかったら、残るは道化師の道しかない。 後輩を脅威に思うのであればこそ、先輩風を吹かせる暇があったら、地道に基礎訓練に励め。これぞ健全なる俳優修業というものだ。 また、多少の評価を指導者から戴いたとしても、それでいい気にはならないことである。君がそのような“小天狗”となった瞬間から、君の成長は終わりを告げる。 役者という表現者は、求道者なのだ。人生をかけて、演技表現に邁進する気持ちをもたなければいけない。それはマスコミ指向であっても同じなのである。 芝居の勉強を始めて10年にも満たぬ小僧が到達できる地点などタカが知れている。そのことを謙虚な気持ちで受け入れれば、小天狗になどはならないはずだ。 |