駄目出しの中にこそ成長のヒントがある
 志望者として養成所に在籍している生徒のうち、「こりゃ駄目だ」というのはすぐにわかる。
 エチュードなどにおいて、自分が駄目出しを受ける時には熱心なのだが、他人の駄目出しは真面目に聞いていない奴。これはもーダメダメ。さっさと諦めさせるべきだが、養成所運営の経費を分担するためには必要として黙認するしかない(こーゆー絶対にプロにはなれないであろう不真面目な奴を、私は『ケーヒくん』と呼んで嘲笑する)。
 君たちは生徒という立場だから実感できないかもしれないが、講師という立場はどんな駄目出しでもその場にいる生徒全員に対してやっているものなのである。
 そして、ほとんどの場合、講師は君たちの失敗を予測した上で、駄目出しの言葉を用意している。その時、駄目を出されている生徒とは、たまたまその用意した駄目出しに引っ掛かってしまったに過ぎないのだ。
 だからこそ、他人の駄目出しには集中しなさい。そして、駄目出しの中にこそ成長のヒントがあると思わなければ駄目だ。

 これは私の人生訓でもあるのだが、成功例よりも失敗例の方が実践的なのである。成功には偶然の要素があっても、失敗に偶然はない。全ての失敗は必然なのだ。
 そして、自分が駄目を出されている時にもっとも大事なことは、自分の弱点と欠点をしっかりと認識することだ。
 これは他の項でもいったが、もう一度、繰り返しておく。

 プロの芝居とは、非のうちどころがないことが前提となる。誰にでもわかる弱点や欠点を抱えたままでは、プロになるなどおぼつかない。プロは、水準として全ての能力を向上させた上で、自分の長所を伸ばした者である。どんなに素晴らしい長所があっても、基礎的な能力のどれかが水準に達していなければ全てが無に帰してしまう世界なのだ。

 そして、指導者の役割のひとつには、君たち生徒の自覚なき弱点と欠点の指摘がある。君たちはその指摘された弱点と欠点を、養成所にいる間に、完璧に直さなければならない。また、他人が指摘された弱点や欠点は、自分に置き換えて徹底的に検証することだ。
 講師の指導力をはかりたいのであれば、ここだ。情け容赦なく弱点を指摘してくれ、かつ、その弱点の克服方法を教えてくれる講師こそが優秀な指導者なのである。
 弱点を指摘しない講師は、単純に君たちを見捨てているだけだといっても過言ではない。
 これは専門学校系養成所に通っている諸君には、特にいっておきたい。真剣な講師にしてみれば、アニメ系専門学校なんてのは小遣い稼ぎ以上のなにものでもないのだ。
 憤慨する前に、自分たちの講議を受ける態度を思い返してみたまえ。半数近くが、ただボケーっと座っているだけというようなクラスを相手にして、なぜ、真剣な講議などできようか? 良心ある講師は、それでも前列に集まったやる気ある生徒には真面目に教えてやろうと思う。が、その真面目な生徒が頑張れば頑張るほどに、他の生徒から「点数稼ぎ」というような妬み、僻み、嫉みを言われるのを知っているから、可哀相に思って講師自身が熱意にブレーキをかけざるをえない。
 その上、多くの専門学校系養成所では、教務課から「あまり厳しくしないでくれ」とまで注文されることもある。「生徒に辞められたら困るから」と。だから、指導にも熱は入らない。教えるべきことを教えたら、それまでなのである。

 そんなところであっても、厳しく駄目出しをしてくれる講師に出会えたなら、君は幸運だ。厳しい講師にこそ、全力を尽くして食らい付いていきたまえ。



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